では、そんな個人事業主の方が住宅ローンを組む際には、どのような事を心に留めておかなけなければならないでしょうか?
4つの項目に分けて考えていきたいと思います。
1. 住宅ローンの基礎知識
住宅ローンは、住宅を購入するために金融機関から借りる長期の融資です。
返済期間は一般的に10年から35年とされており、固定金利や変動金利の選択肢があります。
最近では返済期間が40年、50年という流れになってきました。
ローンの制度の中で、個人事業主において影響があるのは『保証料』です。
住宅ローンの保証料とは、住宅ローンを借りる際に、保証会社に支払う費用のことで、一般的に、借主がローンを返済できなくなった場合に備えて保証会社の保証を受ける必要があります。
保証料は、ローンの借入額や返済期間によって異なり、一度に支払う「一括前払い方式」と、毎月の返済に上乗せされる「分割後払い方式」があります。
保証料を支払うことで、万が一、借主が返済不能になった場合でも保証会社が代わりに金融機関へ返済を行い、その後、保証会社が借主に対して返済を求める形になります。
保証料のポイント
- 一括前払い方式: ローン契約時に一度に保証料を支払う。
- 分割後払い方式: 毎月のローン返済額に保証料が含まれる形で支払う。
- 保証料の金額: 借入金額や返済期間によって異なるが、一般的に数十万円程度になることが多い。
最後の保証料の額について、個人事業主の場合には費用が大きくなる場合があります。理由は冒頭にも書いた『返済リスク』のせいですね。某銀行さんの保証料に関するページにある内容を抜粋してみます。
【融資期間:40年】
保証料:22,553~45,106円
※ご融資金額100万円の場合の期間別保証料 (単位/円)
借入額4,000万 保証料902,120円~1,804,240円
かなり幅があります。
もちろん、審査や商品によって取り扱いが異なりますし、個人事業主でも保証料が不要の場合ももちろんありますので、この辺りはしっかり事前相談しながら進めていきたいところです。
2. 個人事業主が直面する課題
個人事業主が住宅ローンを申し込む際に、最も大きな課題は「収入の安定性」です。
金融機関は、借り手の収入の安定性を重視し、過去数年間の収入証明を求めます。
そのため、個人事業主は以下のような点に注意が必要です:
- 確定申告書の提出: 過去3年分の確定申告書が求められることが一般的です。
- 事業の安定性: 継続的に収入を得ていることを示すため、事業の安定性や将来性を示す資料も役立ちます。
よくありがちなのが、住宅ローンを借りる年度だけ、『所得を増やす』というパターン。
3期分提出する際に、直近一年分だけやたらと所得が増えていると、今回の為に所得を上げたのでは・・・?と推測され、借入金額算出のための所得を3期分の平均で計算されることもあります。
安定性という面ではあまり良い状況とは思われない可能性があります。
基本的には毎年少しづつでもいいので業績、所得が向上している内容が評価されやすいです。
3. 信用力の向上
住宅ローンの審査を通過するために、信用力を高めることが重要です。以下の方法で信用力を向上させることができます:
- 貯蓄を増やす: 頭金として使える資金を増やすことで、金融機関からの信頼を得やすくなります。
- 借入額を控えめに設定: 収入に見合った借入額を設定することで、返済能力を証明することができます。
- クレジットヒストリーの改善: クレジットカードの利用履歴や過去のローン返済履歴も審査に影響します。クレジットヒストリーを良好に保つことが大切です。
この3項目の中で一番現実的で有効なのが『貯蓄を増やす』です。
貸す側としてのリスクは『事業が上手くいかなくなる=ローンが払えなくなる』です。
そのリスクに対してもっともわかりやすい解決策は『自己資金』です。
もう、だいぶ前になりますが、ある個人事業主の方のローンの相談をした際に『これだけ収入があって、なぜこれだけしか預貯金(自己資金)がないのか?』という質問がきました。
言われてみれば確かに・・・となるわけです。
もちろん、基本的には書類の上での所得金額や数字で色々な計算がなされるわけですが、個人事業主の方においてはそのような見られ方をするんだなと思った記憶があります。
貸す側の立場になると当然と言えば当然の疑問ですよね。
4. 個人事業主におすすめの住宅ローン商品
では、個人事業主さんが借りやすい金融機関はどこなのでしょうか?
- フラット35: 長期固定金利型の住宅ローンで、一定の条件を満たせば、個人事業主でも利用可能です。
- おそらく、多くの個人事業主の方で利用されている商品だと思います。
- 信用金庫のローン: 地域に根ざした金融機関は、個人事業主に対して柔軟な審査を行うことが多いです。町でもよく目にする信金さん。一般の方はあまりご利用されている方は少ないかと思いますが、個人事業主の方は事業資金のお借り入れなどでお取引のある方も多いかと思います。個人事業主や小規模企業さんへの融資にものすごく尽力してくれるのが信金さんという感じです。
この他にも、もちろん地銀さん(肥後さんや熊銀さんなど)、ゆうちょ銀行さんなどももちろん相談は可能です。
その際に、どのような基準で相談先を考えていけばスムーズかといいますと、
①事業の借り入れなどの取引のある金融機関さんがある場合
➡まずはその金融機関さんに相談する(信金さん、地銀さんがよく該当します)
②特に取引等はない場合
➡フラット35や地銀さんに相談する(信金さんは取引が無いと難しいかもしれません・・・)
こんな感じですね。
取引があると、そもそも金融機関さんが決算状況を把握されているので、良くも悪くも答えが明確に出ます。
この辺りは明確なことは言えませんが、取引があり、決算内容も悪くないという状況だとやっぱり金融機関さんも頑張ってくれるという印象は強くあります。特に信金さん。
住宅ローン以前に、既にお取引のあるお客様という関係性があるからですね。
5. まとめ
個人事業主が住宅ローンを組むのは一般の会社員さんよりもハードルが高いことは間違いありませんが、適切な準備を行い、信用力を高めることで実現可能です。
収入の安定性を示す資料や、信頼できる金融機関の選定が成功の鍵となりますし、『個人』なのか個人規模の『法人』なのかでも色々と変わってきます。
できる事なら、数年かけて、預貯金、決算内容など、住宅ローンの審査に向けて少し意識して計画してくとだいぶ違うと思います。
住宅ローンの取得に向けて、しっかりと計画を立て、安心して夢のマイホームを手に入れましょう!