ヴィンテージ家具を海外へ買い付けにいくと
雑貨などと一緒に絵画や彫刻、オブジェといった
アート作品が並んでいることがあります。
それはどれくらい価値があるのか
誰が制作したのかも、はっきりしないものも多いのです。
ディーラーに尋ねても
「さぁ、よくわからないね〜」という返事。
が、我が家ルールの「好き」はそんなことはどうでもよくて
それほど重要なことではありません。
直感的にいいなぁ、と感じたら即購入。
持ち帰ってきます。
ヴィンテージのものとの出会いは一期一会。
出会った時がタイミング!
これもヴィンテージの興味深いところなのです。
不思議な出会いだ!と感じると
そのモノへの愛着も増すものです。
有名なアーティストの芸術ももちろん素晴らしいのですが
自分の「選択眼」だけを信じてモノと向き合ってみるのも
なかなか悪くないと思っています。
我が家のリビングルームにあるこの作品もそんな一点。
作者不明。
この絵も主人が買い付けの時に偶然見つけました。
ポスターや重なりあったドローイングに混じって
丸まった状態で置いてあったそうです。
真面目に描き込んだ風景画や抽象画が多いなか
一筆描きのような軽いタッチに心動かされたようで。
入手したのはコペンハーゲンですが
果たして作者はデンマーク人なのか?
国も年代も正確なことはわかりません。
しかも画用紙をつぎはぎして描かれているのです。
仕上がりの完成度はあまり追求していないような。
なにかの下書きか試し描き?
誰がどういう目的で描いたのか?
全くわからないのですね。
でもでも、なんだか愛らしいというか、、、
単色の色も綺麗です。
つぎはぎの画用紙は、時間の流れで劣化したからなのか
湿気をおびたからなのか
カーブしてしまっています。
私はなぜか、そこにも強く惹かれて
この丸まったかんじをそのまま活かしたい!と思い
フレームの中に浮かしたような状態で
額装をお願いしたのです。
実はこの額装、けっこうお高かったです。
いくらだったかはっきりと覚えていないのですが
なんなら、この絵の価格より数倍かかったと記憶しています(笑)
買い付けの家具や雑貨と一緒に
遥々日本にやってきて
私が初めて目にした時も
くるくると丸まった
ただの古びた画用紙のようでした。
子どもが学校の授業中に描いた絵を
夏休み前に自宅に持ち帰ってきた時と
なんらかわりないあのかんじ。
繰り返しになりますが
誰がなんのためにどんな目的で描いたのか?
なぜ画用紙を継いでまで大きく描こうとしたのか?
不明点、多すぎです。
なんとも難解です。
読み取れる情報としては
蝶ネクタイで正装し、指揮棒を持った
コンダクターであるということ。
というか、それしかわかりません!
いろいろな謎と想像が掻き立てられるところが
魅力的で気に入っているところではあるのですが
ある日、小さな子どもが遊びに来た時のこと
この絵を見て
「スマホ待ってるぅ〜」
と言ったのですね、、、
はいっ???
ほぉ、な、なるほど、、、スマホかぁ
新しい考察のページがまたプラスされました。
子どもの視点は今どきで
妙に感心してしまい
確かにね、スマホにみえるわーと。
こんなスタイルで歩いている大人
至るところにいますもんね。
国も世代も越えて読み解かれていく
この作品。
これを描いた人は
自分の書いた絵が、日本の家のリビングルームに
こんなふうに飾られ
あーだこーだ言われることになるとは
思ってもみなかったでしょうね。
そんな想像するとなんだか面白くて
「作者不明の作品」を
独りよがりに鑑賞する楽しさを
確信したのでありました。
karf ディレクター
島田幾子 Ikuko Shimada
東京・代官山のインテリアショップ「karf」で店舗全体の企画を担当。
長年インテリアに携わってきた立場に加え、生活者目線の住まいと暮らし
親として学んできたことや、子育ての環境への考えを
パーソナルサイト「Good Life Tips」で発信。
その人気記事から2023年、絵本『家具ものがたり』を出版。
作画は画家であり絵本作家の松田奈那子さん。